札幌大通地下ギャラリー 500m美術館

第1回札幌500m美術館賞

Award

500m美術館は、現代アートの作品プランおよび企画プランのコンペティションを開催します。会場は500m美術館のガラスケース(幅12,000mm×高さ2,000mm×奥行650mm)7基。全長84mで展開する作品プランおよび企画プランを大募集。アーティストによる企画展、企画者によるグループ展、作家&企画者による企画展など、ガラスケース7基をつかった新鮮な企画アイデアをおまちしています。(企画者とはキュレーター、ディレクター、コーディネーター、ギャラリストなど)
審査を通過しグランプリに選ばれたアーティストおよび企画者1組に制作費100万円を授与し、2013 年2月2日より開催される「第1回札幌500m美術館賞グランプリ展」で作品および企画を発表していただきます。


■ゲスト審査員
松井みどり(美術評論家)

■審査員
北村 清彦(北海道大学大学院文学研究科芸術学講座教授)
柴田 尚(NPO法人S-AIR代表理事)
端 聡(CAI現代芸術研究所/(有)クンスト代表取締役 /美術家)
三橋 純予(北海道教育大学岩見沢校芸術文化コース教授)
吉崎 元章(札幌芸術の森美術館 副館長)

応募方法

応募方法・応募要項等に関する詳細につきましては、下記リンクよりダウンロードしてください。


応募先・お問合せ

有限会社クンスト(担当:佐野)

メールでの応募・お問合せ ※原則メールで応募してください。やむをえない場合は郵送も可。
※必ず応募要項をよくご確認の上、ご応募ください。

グランプリ

永岡大輔

企画・作品に関する
お問い合わせ

有限会社クンスト(担当:佐野)

メールでのお問合せ

入選

該当者なし

選評

松井 みどり

美術評論家

最終選考会が展示の場所や条件をよく研究した提案の集まる高密度なものになるなかで、永岡さんの提案は、際立った集中力を持っていました。かつて栄えた炭坑の街がエネルギー活用の潮流の推移によって寂れて人の移動を余儀なくさせるという物語には、北海道の歴史ばかりでなく、日本の戦後史やグローバル化のなかで激変する環境と人の運命のはかなさを想起させる普遍的訴求力がありました。その物語が時間の推移の中で展開するアニメーション、特にシンプルな線と痕跡によって強い感情と記憶を呼び起こす永岡さん独自の手法で語られることに説得力がありました。出稼ぎ者が集まる札幌という街の中心の地下通路という移動の場において、観客の行為と鑑賞をひとつの感情的思索的体験へと凝縮させる可能性を持つ展示プランでした。

選評

北村 清彦

北海道大学大学院文学研究科芸術学講座教授

今回の第一回「500m美術館賞」にご応募いただいた27組の皆様、どうもありがとうございました。第一次審査で6組に絞り、第二次審査では面接を実施して芸術に対する考え方や作品に取り組む姿勢などを伺いました。作品の準備状況および成熟度、またこの「500m美術館」にふさわしく多くの市民の共感をえられるかどうかなどを総合的に判断し、その結果、永岡大輔さんの《7 Swans》へのグランプリ授与が審査員全員の一致した意見と なりました。これは永岡さん独特のタッチによるアニメーション作品ですが、地方と都会に住まうわたしたち誰もが抱く、望郷と希望、ぬくもりと孤独などの情 感が醸し出された珠玉の短編小説のようでもありました。ただこのタイトルも含め、センチメンタリズムに流れやしないかという危惧もあります。現代の社会構 造を批判するような観点もさりげなく盛り込み、よりいっそう深みのある作品に仕上がることを期待しています。

選評

柴田 尚

NPO法人S-AIR代表理事

最終選考に残った方々は、全体的にレベルが高く、コンセプトだけでなく、マケットや完成図、試作品などとてもよく準備された方々が多かったです。その中でも、永岡さんに注目が集まったのはいくつかのはっきりしたポイントがあったと思います。
・ 試作のアニメーションがとてもよい作品だったこと。
・ 地下歩行空間という美術館やギャラリーと違う公共空間の特性を考慮していること。
・ 今年、夕張での滞在製作を行っており、人口が減りつつある夕張と増えつつある札幌という北海道内の物語を見つめる交通の視点があること。
特に三つ目のポイントは、実際に北海道での滞在製作を経験した永岡さん独自の視点が感じられました。展示方法などはまだ未知の部分もありますが、ぜひ、実作を観たいと感じさせられました。

選評

端 聡

美術家/アートディレクター

基本的に鉛筆画によるアニメーションの映像作品であるが、単に完成された絵を1コマずつ繋げたアニメーションではない。
絵から絵と移行する際に前の絵は消しゴムで消され一旦は白い場面となり、重ねるように次の絵が描かれてゆく。永岡は、それらの行程をもアニメーションとしているのだ。
そこには前に描かれた絵の痕跡、記憶が残像として確かに存在している。
鉛筆と紙の持つ素材感も助け、映し出される画像は平面のアニメーションであるにも関わらず、二次元とは思えない物質感が漂う。表現主義的なアニメーションとでも言っておこう。
さらに、この方法論に追従して作品コンセプト も 北海道を舞台とした記憶と現在であり、永岡は、実際に夕張炭鉱のあった清水沢に出向き地域住民との交流を主とした滞在制作もしている。
移り変わる北海道の歴史を背景に描きは消し、さらに描く永岡独自の行程に強い表現力を感じた。

選評

吉崎 元章

札幌芸術の森美術館 副館長

1回目ということもあり、アートとしての質の高さとともに、展示作品を広く公募する意義を市民にしっかりと伝わることも考慮した。つまり知名度やキャリアに 関係なく、思いも寄らない優れた作品が提案されることを期待していたわけである。市民の心に響くという点で、受賞プランはその前で涙ぐむ人もいるかもしれ ないと思うほど群を抜いていた。札幌の歴史や現状を表面的に取り込むのではなく、この街への人口集中の裏返しとしてある地方の疲弊の問題などを含めなが ら、ここでさまざまな思いを抱いて暮らす人々の人間模様を浮き彫りにする試みだと感じた。スペースの特性を充分考慮しているうえ、市民との交流から作品を 深める点も高く評価した。