展覧会情報
Exhibition

500m美術館vol.49
第12回500m美術館賞 入選展
2025年1月25日(土) 〜 2025年3月26日(水)
500m美術館では現代アートの作品プランおよび企画プランのコンペティション「500m美術館賞」を毎年開催しています。
第12回500m美術館賞では、4組のアーティスト「朝倉毅、岡碧幸、高橋直宏、舘田美玖、堀江理人、山田大揮」「大崎晴地+KanoCo(赤川由加)」「倉富ニ達広」「髙橋侑子」が入選し、2025年1月25日から展示を開催します。
展覧会初日には審査員が実際の展示をみて最終審査を行い、その中から1組をグランプリに選出し授賞式とトークを行います。
【入選作家】
・朝倉毅、岡碧幸、高橋直宏、舘田美玖、堀江理人、山田大揮
・大崎晴地+KanoCo(赤川由加)
・倉富ニ達広
・髙橋侑子
・Tsuyoshi Asakura、Miyuki Oka、Naohiro Takahashi、Miku Tateda、Michito Horie、 Hiroki Yamada
・Haruchi Osaki+KanoCo (Yuka Akagawa)
・Taz Kurafuji
・Yuriko Takahashi
【受賞者】
・第12回500m美術館賞 グランプリ:大崎晴地+KanoCo(赤川由加)
・第12回500m美術館賞 準グランプリ:髙橋侑子
【ゲスト審査員】
・飯田志保子(キュレーター、国際芸術祭「あいち2025」学芸統括)
【審査員】
・三橋純予 (北海道教育大学岩見沢校美術文化専攻教授)、
・吉崎元章(本郷新記念札幌彫刻美術館館長)
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【講評】
第12回500m美術館賞入選展 講評
66組の応募のなかから厳正な審査を経て4組の作家が入選した。幅広い地域から過去最大の応募者数だったことに鑑み、入選自体が表彰に値することを最初に述べておきたい。
グランプリを受賞した大崎晴地+KanoCo(赤川由加)は、KanoCoさんの眼の動きが指示する線を大崎さんが手で透明板に描く手法でドローイングとペインティングを共同制作した。難病を患うアーティストは、作品より本人の身体や生きざまに目を向けられることがしばしばある。同時にその共同制作者は、どのような立場で、いかにして、どこまで他者を代理し得るのかという問いに対峙することになる。倫理的な正しさやその逆のバイアスに作品が覆われてしまうことなく、二人が独自のコミュニケーションと表現方法を築き上げてきたこと、そしてその実践によって見応えある多彩な線の作品を描き出したことを評価したい。ガラスケースの片隅に展示された制作過程の記録映像からは、KanoCoさんが自らの視線の動きに加え、瞼の開閉、首の動き、顔の表情などを用いて、線の伸び、撥ね、止め、点描、色の選択を伝達する描法を培ってきたことが看取される。こうした画家の技法が、中空に躍動する多彩な線を生み出す。一方、媒介者たらんとする大崎さんは、体中のアンテナを総動員してそれらの指示を受信し、透明板に定着させる。大判の作品では二人とも顔が赤らむぐらいの運動量と集中力でもって描画がなされ、すがすがしいほどに表現する喜びが感じられた。鑑賞者がガラスケース越しに作品を見る行為が、透明板を挟んで行われる二人の制作スタイルに呼応する点に、空間の特性が活かされていたことも記しておきたい。
準グランプリの髙橋侑子さんの絵画は、表現の喜びに対応する「見る喜び」を鑑賞者に与えてくれることを評価した。街の風景と人々の姿を描いた作品群には、絵を目にした通行人がふと共感を覚える普遍性のみならず、奥行きの歪みやコラージュ的な画面構成といった絵画ならではの視覚的な操作がさりげなくなされており、色彩感覚と共に抜群のセンスの良さが感じられた。6名の作家(朝倉毅・岡碧幸・高橋直宏・舘田美玖・堀江理人・山田大揮)による「除雪」「雪かき」をテーマにした企画は、雪と共に暮らす市民としての視点と、グループ展として作品を提示する試みが評価された。だが、グループ内で共有されてきた批評的な問題意識をどのようにして不特定多数に開くかという点では、さらにブラッシュアップの余地があるように思われた。複数の小品やテキストは、ショーケース型の展示空間では「見る」より「眺める」ことになり、散逸しやすい。力強いプレゼンテーションには、主張の焦点をあえて絞る方法もあったのではないだろうか。倉富ニ達広さんの蛇のモチーフには、国家と時間を扱った壮大なメッセージが込められていたが、空間に対してややダイナミックさに欠けるスケールになってしまったのが残念だった。予定されている個展での発展を期待したい。
ゲスト審査員 飯田志保子(キュレーター/国際芸術祭「あいち2025」学芸統括)
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第12回500m美術館賞入選展 講評
12回目となった今回の500m美術館賞で最も特徴的だったのは、応募総数の急増である。全国各地や海外から、幅広い年齢層による多彩な作品プランが66件も集まってきたことは、この賞の認知度が高まってきたことの表れとして、まずは喜びたい。地下通路に面する公共性や極端に横長のガラス越しの独特の展示空間という難しさが、逆に他にはない特性として、制作や発表の意欲につながっているのかもしれない。
一次の書類審査と二次面接を経て選ばれた4作品は、いずれもこの賞においてこれまでにない新たな傾向のものであり、新鮮であった。グループによる展示、二人のコラボレーションによる描画、緻密に成形されたレリーフ状の表現、絵画のみによる構成。まったく方向性や手法が異なっており、賞の選考にあたっては、何を重視して評価するかも含めて、慎重かつ活発に議論を重ねた。
他の審査員が受賞作品を中心に講評を書くと思うので、私は字数の関係もあり、惜しくも賞を逃したものの、この札幌で冬の時期に展示することの意義を強く感じさせた作品について触れたいと思う。
それは、大通側からの最初の作品、若い6人のアーティスト(朝倉毅・岡碧幸・高橋直宏・舘田美玖・堀江理人・山田大揮)による「ゆきどける―「アートより除雪」から文化する、6人の視点」である。私は何よりもそのコンセプトに書類審査の段階から興味をもっていた。作品名にもある「アートより除雪」という札幌市議会議員の発言から端を発し、雪国で生まれ育ったからこそ感じられる日常的な雪との関わりを、「私たちに降りかかり、積もっていくものに、埋もれてしまわないための抵抗と方策を思索する」ことへと広げていこうとしているのである。二項対立を越えた問題意識を共有するために、幾度もディスカッションを繰り返したと聞く。そのうえで各自が自分なりの向き合い方で作品にし、それらを共同の空間に展示しているのだ。それを単なる羅列に終わらせることなく、関係性をもたせて全体のまとまりをもった展示として成立されることの難しさもあったであろう。今回だけで終わらせるにはもったいないテーマとアプローチであり、今後もさらに深めていくことを期待せずにはいられない。なお、この内容にとって会期が冬季間であることも重要だったと思うが、最終審査の時には、1月末の札幌では珍しくほとんど雪が積もっていなかった。例年のように、日々雪かきに追われ、また外が雪で覆われていたならば、この作品が共感をともなってさらに強く心に響いてきたとも思われ、やや不運だったかもしれない。
審査員 吉崎元章(本郷新記念札幌彫刻美術館館長)
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第12回500m美術館賞入選展 講評
毎回、500m美術館賞の審査時には造形表現の可能性を感じるが、特に今回の第12回目の審査では、現代アートの頼もしい未来を実感することができた。過去最多の66組という応募作品プランを改めて見渡すと、作品テーマや表現方法の多様さに驚くとともに、公共の地下通路という制限が多い特殊な展示空間だからこそ、通常とは異なる方法で作品プランを考えざるをえず、その制限自体がグランプリに挑戦する原動力になっているように思う。各々の作品テーマも、現代社会の課題を批判的に取りあげる主張から、生活の中での何気ない日常までと幅広く、また、現代アート視点からの伝統的技法への再解釈、ユニットの共同制作として複合的な表現につなげるなど、文字通り多種多様なプランが寄せられた。
本来であれば比較すること自体が難しい中で、全66組の中から最終に残った4組は、作品テーマと造形手法を合致させた独創的な表現空間が期待できるプランであり、公共空間で多くの人々に届けられる作品プランとして、審査員の評価につながったといえる。
グランプリを受賞した大崎晴地+KanoCo(赤川由加)のユニットは、表現することへの積極的な意欲をストレートに表明し、共同制作する上での多くの制約を「不自由」と捉えるのではなく、「新たな造形手法」を生み出す表現として、そのプロセスも含め、美術の力と可能性を見せてくれた。
また、今回の最終審査で時間を要したのは、准グランプリ賞を出すかどうかということだった。髙橋侑子のストレートな絵画群は、強いメッセージや特殊な造形手法があるのではないが、日常的なシーンを描き出すセンスが特に優れており、画面構成力や色彩感覚、軽快な筆致なども含め、見る人を引きつける描写力が認められ、異例ではあるが准グランプリ賞となった。
倉富ニ達広の作品は、海外を拠点としたマーケティングディレクターとして、企業の技術開発部門とも協力した大がかりな作品プランであるが、テーマのスケール感が最終展示空間での造形ではやや不足した感があり、今回の受賞を逃した。また、朝倉毅・岡碧幸・高橋直宏・舘田美玖・堀江理人・山田大揮の若手6人ユニットの作品は、個々が作家として名乗りを上げるユニット名称や、社会的な課題である「除雪」について、客観的なデータ活用を根拠としながらも、あくまでも作家視点での戦略的なプランであり、特に2次審査のプレゼンテーションは秀逸であった。各々の造形スタイルを活かした共同制作のモデルケースでもあり、今後の活動に期待したい。
審査員 三橋純予(北海道教育大学岩見沢校美術文化専攻教授)
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○ご来場いただいた方を対象にWEBでアンケートを実施しております。今後のより良い企画運営のためご協力をお願いします。
回答方法:スマートフォンやパソコンを使って下記のURL又はQRコードからアクセスしてご回答ください。
(札幌市公式ホームページ ホーム > 教育・文化・スポーツ>文化・芸術>札幌市所管の文化施設について(指定管理者制度など)>札幌大通地下ギャラリー「500m美術館」)
https://www.city.sapporo.jp/shimin/bunka/500mbijutukan/2024_questionnaire500m.html
開催概要
- 時間:
- 7:30~22:00
- 会場:
- 札幌大通地下ギャラリー500m美術館
- 住所:
- 札幌市中央区大通西1丁目〜東2丁目(札幌地下鉄大通駅~バスセンター前駅間 地下コンコース内)
- 主催:
- 札幌市
- 企画:
- 有限会社クンスト/CAI現代芸術研究所/CAI03、一般社団法人PROJECTA
協力:札幌市図書・情報館
連携:札幌国際芸術祭(SIAF)
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関連イベント
第12回500m美術館賞グランプリ授賞式+トーク
展覧会初日となる1月25日(土)に実際の展示をみて最終審査を行い、その中から1組をグランプリに選出し、授賞式と500m美術館賞についてのトークを札幌市図書・情報館にて行います。
【登壇者】
・ゲスト審査員:飯田志保子(キュレーター、国際芸術祭「あいち2025」学芸統括)
・審査員:三橋純予 (北海道教育大学岩見沢校美術文化専攻教授) 、吉崎元章(本郷新記念札幌彫刻美術館館長)
【司会】
・端 聡(美術家、CAI現代芸術研究所/CAI03 アートディレクター)
日時:2025年1月25日(土)16:30~18:00(開場16:00)
会場:札幌市図書・情報館 1階
住所:札幌市中央区北1条西1丁目 札幌市民交流プラザ
入場料:無料
定員:30名(事前申込不要・先着順)
【内容に関するお問い合わせ】
有限会社クンスト(担当:佐野)sano@cai-net.jp
【会場に関するお問い合わせ】
札幌市図書・情報館 TEL: 011-208-1113
「第12回500m美術館賞 入選展」の設営風景を公開しました!